掟破りで異色の傑作 『大正×対称アリス』(ネタバレ有)

以前から気になっていた大正×対称アリスをフルコンプした。

本当に面白かった。やばい。やばい。
全ての謎が解けた時、身体がビビッ!と雷に打たれたかのようになった。
どんな頭してたらこんなストーリー思いつくの??脚本家さんの才能が恐ろしい。

かなり異色なストーリーで
ヒロイン=自分ではないところで人を選ぶ作品なのかな、とは思ったけど
むしろ私はこの設定が好き。
伏線もあらゆるところに散りばめられていて真相がわかった時はうわあああああ!!!!と叫ばずにはいられなかった。

特にヒロインの百合花ちゃんに1番(いろんな意味で)心動かされた。
まずシンデレラ√のはじめから、
物語が有栖百合花の自分語りのように語られているところから面白いなあって。
でも、一人称で語られているはずなのに、
有栖百合花の知っていること、彼女の本当の気持ちは私たちプレイヤーには全くわからなくって、途中から私は有栖百合花に騙されているじゃないの!?!?って思いながらプレイしてた。
バッドエンド間際に出てくる魔法使いさんも
有栖百合花じゃなくて私たちプレイヤーに話しかけていたし、
主人公(有栖百合花)≠プレイヤー
であることは間違いないなって察した。

主人公≠プレイヤーではあるけれど、
私たちはこの物語を見守る係ではなく、
むしろ私達プレイヤーも物語の中に組み込まれていてより作品に入り込めたと思う。
(ややこしい)
こんな設定は、主人公のデフォルト名を呼んだり、主人公にボイスがついたりして、乙女ゲームを第三者目線でプレイする人が増えてきたこの年代だからこそ生まれたんじゃないかな…
AMNESIAは記憶喪失の主人公にすることでプレイヤーと主人公の距離を近づけてより物語に入り込めるようにしたらしいけど、これとは逆の設定にした対アリはとても面白くてかつ新しい!!!!!!すごい!

大雑把にいえば
有栖百合花は2人居て、
片方の有栖百合花は私たち、
もう片方は私たちを操っていた側でこの歪なおとぎ話を作った(始めた)全ての元凶だったわけで。すべてこの子の思うままに動かされてたってオチ。

√ごとの有栖百合花の性格もちょっと違くて、1番共感できたのは赤ずきんちゃん√の百合花ちゃん。
逆に1番理解不能だったのはグレーテル√の百合花ちゃん。
最初からグレーテルを好いていた段階だったから、乙女ゲームの誰かを好きになる段階が抜けていて、え?え?え?なんでもう想い合っちゃってるの??と疑問を感じざる負えなかった。
でもこれもグレーテルがアリステアの人格のひとつであったからだとわかった今なら納得。

√ごとに猫かぶって性格変えてたのも、
有栖百合花ちゃんのアリステアを思う愛がシンデレラ、赤ずきん、かぐやetc..を救うことに繋がったんだと思うと感動を通り越してぞわぞわする笑
「好きな人のためには猫被るのも当たり前」みたいなこと何回か言ってたけど、これって
「好きな人(その√での攻略対象)」ではなくて、
「好きな人(アリステア)」って意味よね!?
現実世界の百合花ちゃんと夢の中の百合花ちゃんの感覚は共有されてないみたいだったから夢の中の百合花ちゃんは前者の意味合いで言ったのだろうけど。

有栖百合花の愛の深さに感動いうか恐れを抱いた。誰よりも愛の深い人物。
好きな人を救うためなら、その人の中にまで自分という人格を作り込んでしまう、そんなぶっ飛んだことまで可能にしてしまう女の子。
その上、各キャラクターに"彼らだけの"自分の人格を作っている。
赤ずきんもシンデレラもみんな、自分だけの夢に現れた百合花(私たち目線の)が好きでいる状態だった。
でも、これは本当の有栖百合花(外側)を好きでいるわけではなくて。
百合花ちゃんはこんなにもアリステアくんのことを想い、行動をしているけれど、
本当の自分を好きになってくれている人は眠っているアリステアくんしかいない。
こう見ると百合花ちゃんは報われないとっても可哀想な子に思えてしょうがないんだけれど、当の本人はそんなことまっっったく気にしてないんだよね。
大好きな彼を救うためなら、自分をいくら犠牲にしても良い、周りなんてどうでもいい、手段なんて選ばない、って考えの子だから笑
こんな子恐ろしいし、危ないし相当クレイジーである。でもこんな子だったからアリステアくんが救えたんだろうな。

攻略キャラで一番好きだったのは赤ずきんさん。
でも「この子が推し!」ってはっきり言えないのがしんどい
私は赤ずきんが大好きだったけど、赤ずきんは人格のひとつであって、赤ずきんという人ではない。
赤ずきんが好きだけど、それはその1面ってだけで、本当に『彼』を好きになるには他の子も愛さなければいけなかった。
オオゥ……………………🤦‍♀️🤦‍♀️

さっきから彼女のことばかり触れてるように、結局有栖百合花嬢が一番好き。
実際いたら絶対に関わりたくないけど。

大正×対称アリスは、
キャッチコピーの『表か裏か、おとぎ話の舞台裏』のように、これは有栖百合花とアリステアの物語を進めていく上での舞台裏のストーリであり、
彼女によって作られた舞台、
そしてこの作品自体が
『王子様を救うおとぎ話』であり、
"究極の愛のストーリー"でした。





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大分前に残しておいていた対アリの感想を引っ張り出してきた。
久々に自分の感想を読み返すと、またプレイしたくなってきた。このゲーム、謎が解けたあとまたやり直すと絶対面白いよね。

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